初詣で




※エドさん
※「聖夜」の続きだったりします。



12/31 午後10時。
来年まで、あと2時間です。


「寒ィ〜〜〜〜〜!」
「ほんと…でもさっきまで睡魔と戦ってたから眠さはふっとんだかも。」
「勉強?オレもしてたよ。」
「そろそろラストスパートだもんねー。」


まだ暗い道を二人で歩く。
一か月前の私には想像も出来なかったこと。
24日のクラスでのクリパで言われた、あの言葉を思い出す。


"次いつ会う?"


「結構人多いな。」
「だね。あと二時間どうしよっか?」
「オレ何か飲みたい。」
「じゃー自販機で買ってくるね。コーヒーでいい?」
「オレ買ってくるよ。」
「平気、ちょっと待っててね。」


パタパタと足音を立てて自販機へと走る。
人が多くてちょっと大変だけど、今の私にはさほど気ならなかった。


「えーとコーヒーコーヒー。」


かじかむ指でぐっとボタンを押す。ガコンと音がして、缶が出て来た。
二つの缶コーヒーは冷えた手には熱すぎた様で、服の袖を引っ張って持った。


「今日こそ・・・言わなきゃ。」


元旦に告白なんて聞いた事ないけど、私には時間がない。
年が明けたら学校は家庭研修に入っちゃうし、プライベートでだって今日会えてるのが奇跡みたいなもんなんだから。


「うぅー・・・寒い・・・て、きゃっ!」


油断してたら人ごみに流された。逆流するのは大変だし、迷惑だ。
どうしようと思いつつも中々もがくことが出来ずにいると、


「夏川!!」
「エド!」


ぐっと腕を掴まれて、エドの胸に引き寄せられた。


「(ひゃあああああああああああ)」


背が他の男子より小さいって言っても、やっぱり男のこなんだなぁ。


「おまえ遅ぇよ、凍死する。おまけに流されてるしよー。」
「面目ない・・・はい、コーヒー。」
「別にかまわんけどね。サンキュ。」


頭をポンとたたかれる。そんなことにも一々舞い上がって。
自分がこんなに"恋する乙女"になるなんて、思ってもいなかったから。


「お、んまい。」
「エド鼻赤いよ。」
「マフラーしてくるべきだった。」
「私も。」
「あとどれくらいだ?」
「今11時30分。あとちょっとだね。」
「お前30分もコーヒー買いにいってたのかよー。」


告白シミュレーションしてたからね。

でも、告える。今なら。


「エド」
「ん?」
「好き。」


(うわあああああああああああ)


いった。いっちゃったよ、どどどどうしよう!
今なら弁解できるかも、でも何て?


「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・エド?」
「・・・」
「おーい、エド?」
「・・・」


何度呼んでも返事が返って来ない。
彼の顔を覗き込むと、鼻だけではなく頬まで真っ赤に染まっていた。


「エド顔まっ」


か。

言い切る前に、私の視界は突然真っ暗になった。
温かい。伝わって来る彼の鼓動は私以上に高鳴っていた。
抱きしめ、られている。


「エド」
「こっち見んな。」


耳元で弱弱しく呟かれるもんだから、私まで顔が赤くなった。


「夏川をさ、」
「うん?」
「初めて見たのは、中2だった。」


不安そうな顔で教室移動してるから、見てらんなくて声かけたんだ。
夏川に"ありがとう"って言われた時は、よく分かんねぇけどすっげえ嬉しくて。
高校も志望校一緒って知って、"ぜってぇ受かる"って思ったんだ。


「高三で同じクラスになれて、嬉しかった。」
「私もだよ。ずっと前から、好きだったから。」
「でも、そん時なんかよりも今の方がすげー嬉しい。」


遠くの方から、カウントダウンの声が聞こえる。

エド、もう来年になっちゃうんだね。



3,2,1



きみとなら、どんなみらいだって。



******
「エドは何お願いしたの?」
「オレは神様なんて信じてねぇかんな、何も願ってない。」
「へぇ〜」
「夏川は?」
「私は受験合格と、エドが私のこと名前で呼んでくれますようにって!」
「・・・」
「あ、照れてるー」
「誰が照れてる!」


んなもんいつだって呼んでやるよ。


「ミナ」


ミナと一緒にいれますように。
なんて願ったのは、ミナには内緒。






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